
LET IT BE(1970年)
発売順ではビートルズのラストアルバム。
しかし、制作順では『ABBEY ROAD』の方が後なので、例によって制作順でいかせていただきます。
ジョージくんが親睦のためにインドの林間学校を企画したのは前述の通りだが、結局『THE BEATLES』のレコーディングを通して、グループはバラバラになりつつあるという現実を目の当たりにすることになった。
特にニュータイプとして覚醒したアムロ・ポールについていけない自分に焦りを感じていたシャア・ジョンは、その反発からヨーコ(とてもじゃないがララァに引っ掛ける訳にはいかない)とつるんだり、「ダーティ・マック」なんて嫌みな名前のオールスターバンドを組んだりと、グループ外の行動が多くなっていた。
単独行動という意味ではポールの方が早くからワンマンレコーディングをしたりしていたのだが、信長同様、天才ポールはそんなことには気づかずに、ただバンド消滅の危機感を感じていた。
何よりジョンが怪しい。
あれだけいっしょにいて、いろんな曲をいっしょに作ったのに、今やヨーコとつるんでばかり。
今でもたまに顔をつきあわせてやると息はぴったりなんだから、ジョンをなんとかつなぎとめておきたい。
ワンマンレコーディングする割にはバンド大好きのポールは、ここは自分がなんとかしなくちゃと、「ビートルズの原点に帰ってライヴをやろう」と呼びかけた。
そこからライヴがテレビ映画になり、ジョージが抜けたりビリー・プレストンを連れて戻ったり、ルーフトップ・コンサートまでやったのにアルバムリリースは頓挫し、結局『GET BACK』が『LET IT BE』になってポールがマジでイチ抜けしちゃったというお話はご存知の通りで、いまさら言うまでもない。
不思議なのは、なぜビートルズはこの長いことほったらかしにしたアルバムをオクラ入りさせなかったのか。
この出来に満足しなかったビートルズは、最後の力を結集して『ABBEY ROAD』という大作を作り上げ、リリースしているのだ。
EMIはともかく、映画会社との契約があったのだろうか。
『ABBEY ROAD』発売の約3カ月後、映画に使われているからという理由で、ジョンを除く3人で『I Me Mine』の追加レコーディングを行なっている。
ポールの了解なしにジョンによってレコーディングテープがフィル・スペクターの手に渡ったのは、それからさらに3カ月近く後の話である。
すでに『ABBEY ROAD』を聴き、ポールの脱退宣言(“宣言”というのは語弊があるような気がするが)のニュースを聞いた当時の人たちは、どんな気持ちで『LET IT BE』を聴き、映画を見たのだろうか。
それから33年後、ジョンとジョージはすでに亡く、ポールの意に反したリプロデュースを行なったスペクターが殺人容疑で逮捕された2003年、スペクターのアレンジを排してマスターテープからリミックスされた『LET IT BE ... NAKED』がリリースされている。
残されたビートルズ&APPLEのプロジェクトは、映画のリマスター&リエディションDVDのみか。
それからさらに20年、映画の撮影からは半世紀の後、人類はコロナというパンデミックに陥り、感染防止のため外出が憚られるなか、暇を持て余した人々は、ついにパンドラの匣を開けた。
ピーター・ジャクソンという映画監督に映像&音声素材を託し、8時間にのぼるドキュメンタリー映画に仕上げ、IMAXという未来のライヴ会場でルーフトップコンサートを実現するという、なんともSFチックな物語を展開したのである。(2022年2月9日追記)
ちなみにシングルでは結果的にアルバムよりはるかに先行して『Get Back/Don't Let Me Down』をリリース(なぜ『Don't Let Me Down』がアルバムから洩れたのかも不思議だが)。スペクターの手にかかる直前にマーティン先生プロデュースの『Let It Be/You Know My Name』がリリースされている。
01 Two of Us
ポールとジョンのツインボーカル&きっちり左右に分かれて聴こえるツインアコースティックギター。ポールがリンダとのことを歌にしたらしいが、どう聴いても“Two of Us”はジョンとポールでしょ。「ずっと伸びる道よりも長い思い出があるじゃん」なんて、オープニングからいきなり言うかよ。「信じなよ」って言われてもなあ…。
02 Dig a Pony
ルーフトップのライヴ音源。
ジョン「1、2、3…」
リンゴ「ちょっと待ったあ!」
ジョン「…ごめんなさい」
リンゴ「い~よ~」
(おまえら『ねるとん』か!ってもう若い人には分からんぞ)
スペクターによってポールとジョージ(?)の「オーライウォーンティズ…」がカットされたが、この構成は『NAKED』でも同じ。このアルバムではだいたいジョンとジョージのギターがきっちり左右に分かれているので分かりやすい。
03 Across the Universe
音源自体は1967年頃のもの。スペクターの音壁はともかく、テープスピードを落としたのは正解のような気がする。WWFチャリティアルバム収録のバードバージョンは逆にスピードが早い。『NAKED』がノーマルスピードになるのかな?
04 I Me Mine
前述の通り、最後に追加録音されたジョージの曲。「オレオレ」の詐欺じゃなくてポールに当てつけた曲とも言われるが、はてさて…。だいたい、ポールとジョージが仲が悪そうに見えるのは、兄弟喧嘩のようなもんなんだよね。アレンジについてはアコースティックギターがクリアに響く『NAKED』の方が断然に上。
05 Dig It
ジョンのお遊びジャム。即興で作ったということか、クレジットは4人の連名になっている(ビリー・プレストンは入れてもらえなかった)。
06 Let It Be
『Yesterday』同様、長年のファンには今さら口に出すのも恥ずかしいが、やっぱりいいもんはいい。音源は同じなのだが、ピアノやボーカルの音質がシングル(マーティン先生)とアルバム(スペクター)では全然違っていて、イントロの最初の音でどちらか聴き分けられなければファンではないとされている。『NAKED』では歌詞が一部違うテイクが使われている。間奏部分は『NAKED』版がいちばんつまらないと思うんですが。
07 Maggie Mae
楽器の編成から見て、01のレコーディング時に即興でやったお遊び。クレジットは「伝承歌アレンジドバイ4人のメンバー」。
08 I've Got a Feeling
Lennon - McCartneyの合わせ技1本で、これもルーフトップ音源。深いエコーがかかっていて、それはそれで妖しげでいいと思っていたが、『NAKED』のライヴっぽい生々しい音を聴くとやっぱり『NAKED』版がいい。映画ではジョンのギターにポールが注文つけているシーンがあるが、ルーフトップで実際に演奏したのはジョージだった。
ジョン「まいったな…難しいや」
ジョージ「そんなこと言って、難しいとこやってあげたじゃん」
ジョン「なに! もうお前の曲はやらん。歌も歌わせん」
ジョージ「げろげろ」
という訳で、ルーフトップでジョージの曲はなし。歌もこの曲で少し歌っただけだった。
09 One after 909
ごく初期にレコーディングされてボツになった曲のリメイクでルーフトップ音源。当初はとろい8ビートでさすがに使い物にならなかったが、今回は2ビートでノリとキレの良さが際立っているし、ラフなハモリもカッコいい。もちろんビートルズが格段に成長したからに他ならないのだが。ジョージとビリーの貢献度も大。
ジョン「オ~、ダニボーイ♪」
リンゴ「この寒いのにダニなんかいないよお」
ジョン「なに! もうお前の曲はやらん。歌も歌わせん」
リンゴ「い~よ~。始めっから曲なんかないし」
という訳で、このアルバムではリンゴにリードボーカルは与えられなかった。
10 The Long and Winding Road
甘いバラードのポールという巷のイメージを決定づけた曲。ポールとて普通にアレンジすればそうなるのは分かってたからこそシンプルに仕上げたかったのだが、スペクターはやっちゃった。ポールはそれに激怒し脱退を宣言、というのが定説だが、ポールが本当に怒ったのは自分に黙ってフィル・スペクターを起用したジョンとあとの二人に対してである(アレン・クラインの件もあるし)。すでにソロバムもほぼ出来上がってるし、GET BACKセッションでもはやグループとしての結束は回復不可能と悟ったポールは『ABBEY ROAD』で落とし前をつけ、あとは当面活動の比重をソロに移そうと思っていたはずだ。単にスペクターが曲をいじったくらいなら、脱退まで宣言する必要はなかったのである。
ただ、アレンジについて言えば、スペクターの音壁を排した『NAKED』版もそこまでいいとは思えない(ギターの音もイマイチだし)。もしもマーティン先生が本気で取り組んでいたら、どんな曲になっていただろうか。
いちお、後に『GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET』で取り上げたものがマーティン先生とのコンビということになるのだろうが…。
11 For You Blue
ジョージのチープなブルース。スライドギターはジョージではなくジョン。
12 Get Back
ビートルズに原点に戻ろうと言ってるのか、ジョンに戻ってこいと言ってるのか、はたまたヨーコに帰れと言っているのか(ジョンはルーフトップの演奏でそう受け取ったらしい)。ビートルズストーリー的には「原点に戻ろう」が美しいが、もともとの歌詞から考えると、相手がヨーコかどうかは別にしても「帰れ」のニュアンスが強いんじゃないだろうか。ジョンが腰砕けのリードギターを演奏しているが、頭なのか裏なのかよく分からないジョージのバッキングギターもなかなかいい。シングルではブレイク後に再び演奏が始まり、アドリブボーカルが入ってフェイドアウトで終わる。
警官「屋上でライヴをやってはいか~ん」
ポール「待ってました! 止めるな! 逮捕してもらえるぞ!」
警官「まあ、私も聴きたいから、この曲が終わったらやめなさ~い」
ポール「え″~」
かくしてルーフトップ・コンサートは無事(?)終了した。
(つづく)
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