G3の雑感録

楽隠居のブログです。映画レビューとリハビリ日記が中心です。

SF理想社会(#4)


今回は予告通り2050年の世界のエネルギー状況について。
まずはCOP(20第20回締約国会議)について。
2014年12月ペルーの首都リマで気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)と京都議定書第10回締約国会議(CMP10)が開催された。
まず、そのレポート(WWFジャパン「2050年の世界」を描く国連の会議」)について。温室効果ガスは、石油や石炭などの化石燃料の使用に伴って排出されるので、温暖化対策とは実はエネルギー対策と同じ。
だから、2050年の温暖化対策を考えるのは、そのままエネルギーを考えることであり、私たちの生活がどうなっていくかを考えることなのだ。

この長期目標の議論の中で、温暖化の影響を最も強く受けている小さな島国の連合AOSIS(小島嶼国連合)が、交渉グループとして初めて2050年までの化石燃料の段階的な廃止を支持すると表明。
ノルウェーや温暖化対策に先進的な考えを持つラテンアメリカの6つの国の連合AILACも賛同した。

逆に「国際交渉の足を引っ張る国」に贈られる「化石賞」ば日本が4年連続で受賞(ほかに今回はニュージーランドアメリカ・ブラジル・ロシア・カナダ・ノルウェー・韓国・イスラエルEUベトナムサウジアラビア・コロンビアなど、先進国の多くと産油国が占めている)。
理由は、脱化石燃料が叫ばれるなか、その取り組みに消極的だから。日本は火力発電所化石燃料に水素やアンモニアを混ぜて温室効果ガスの排出量を削減し、石炭火力の発電比率を下げていく方針を示しているが、まだ不十分とみられているらしい。
またCOP27に岸田首相が不参加だったことも当て擦りされている。
ただし、WWF原発反対や人権侵害、肝心のレッドリストの動物保護に関しても多方面から非難を浴びているので、そのまま間に受ける訳にはいかない。

じゃあ、国連の見解はどうなのか?
国連は原子力の活用には前向きだが、基本的にSDGs(2030年の目標達成)に基づいてるようなので、参考にならないことはないけど2050年のことまでは分からない。

そんな中では、SDGs#7が「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」については、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」と謳っている。
電気を利用できる世界人口の割合は着実に増えてきていて、2000年の79パーセントから2012年の85パーセントになったが、いまだ11億もの人々がまだこの電気の利用ができないでいる。

料理のためにクリーンな燃料や技術にアクセスできる世界人口の割合は、2000年の51パーセントから2014年の58パーセントへと上昇した。
しかし、固形燃料やケロシンなどの公害燃料を利用する人の絶対数は増加していて、その数はおよそ30億人。

再生可能エネルギーの利用は急速に増えて、2010年から2012年には年間4%の割合で増えた。
しかし、エネルギー強度(第一次エネルギー総供給を国内総生産で割った値)は全地球で2010年から2012年にかけて1.7%減少した。
このことは1990年から2010年の期間よりはかなりの改善だ。
エネルギーは気候変動の主な原因で、全地球的温室効果ガス総排出量のおよそ60%を占めている。
炭素強度(炭素由来の熱エネルギーの割合)を下げることが、気候目標にとって不可欠である。

世界人口のおよそ4分の1が電気のない生活をしており、それ以上の人々が料理や暖房のための熱エネルギーの燃料を利用できない。
エネルギーの適切な供給は、経済成長と貧困の撲滅にとって不可欠であるが、従来のエネルギー・システムが環境や健康に与える影響は懸念の的でもある。
1人当たりのエネルギー需要が増加しており、それが世界人口の増加とあいまって、現在のエネルギー・システムでは持続できないまでの消費レベルに達している。

エネルギーに関して国連はさまざまな方法で開発途上国を支援している。
例えば教育や研修、能力育成を通して、また政策改革を援助することによって、さらにはエネルギー・サービスを提供することによって、支援している。
汚染がかなり少ない再生可能なエネルギー源へ向かう努力も行われているが、需要の増加が依然として供給能力を上回ってしまう。

2004年、国連システム事務局長調整委員会が設置した「国連―エネルギー(UN‒Energy)」は、エネルギー分野における重要な機関だ。
グローバルなエネルギー課題に国連が一貫した対応をとれるようにし、2030アジェンダ(課題項目)のエネルギー関連の項目実現するために民間セクターや非政府組織にその活動に効果的に協力を仰いでいる。

2016年、およそ450基の原子炉が世界30カ国で運転中で、11パーセントの電力を供給した。
核エネルギーはクリーンで信頼でき安価上に、気候変動への負荷を軽減することができる。
その利用はますます増えるものと予想される。
国際原子力機関IAEA)」は国連期間の一つで、原子力の安全安心な平和的利用の開発を進め、原子力技術を利用して持続可能な開発を図っている、原子力の分野で科学技術協力を進める世界の中心的存在だ。

また、原子力の安全に関する情報を交換し、ガイドラインと規範を作成することも肝心だ。
各国の要請に応えて原子炉の安全性を高め、事故のリスクを回避させる方法について各国にアドバイスするのもIAEAの役割だ。
原子力を利用した事業が増大し、その結果、原子力の安全の領域におけるIAEAの責任も大きくなった。
また、ウクライナーロシア間の紛争で原発が標的の一つになるといった事態も起こっている。
IAEA放射線から健康を守るための基準を設定し、また放射線放出物資の安全な輸送など運営に関する基準や技術的ガイドラインも作成している。

1986年に採択された「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(原子力事故援助条約)」や「原子力事故の早期通報に関する条約(原子力事故早期通報条約)」では、放射線事故が発生した場合は、加盟国間で緊急援助を行うことを定めている。

IAEAが受託機関となっているその他の条約には、1987年の「核物質の防護に関する条約(核物質防護条約)」とその2005年修正(2016年5月に発効)、1963年の「原子力損害に対する民事責任に関するウィーン条約(いわゆる“ウィーン条約”)」、1994年の「原子力の安全に関する条約」、それに1997年の「使用済み燃料管理の安全と放射性廃棄物管理の安全に関する共同条約(放射性廃棄物等安全条約)」がある。

IAEAの技術協力は専門家の派遣、持続可能な開発を強調した原子力技術の平和利用に関する研修を行っている。
これらによって、各国は水・保健・栄養・医薬品・食糧生産などの重要な分野で必要な支援を受けられるのだ。

例えば突然変異育種に関連したもので言えば、放射線技術の利用によって有益な作物品種が開発され、食糧生産が改善されたといったことなど。
同位体水分子の利用で地下帯水層の地図を作成し、地下水や地表水を管理することなども可能にした。
汚染を探知して規制しダムの漏水や安全を監視することもで可能で、安全な飲料水の入手につながっている。
また、開発途上国や中所得国で放射線療法設備を提供し、癌患者の安全な治療を行えるような医療スタッフの育成も行っている。

IAEAはウィーンにある「国際原子力情報システムを通して原子力に関係する科学技術のほあらゆる情報を収集し、その普及を図っている。
オーストリアモナコに研究所があり、研修も実施している。
また、ユネスコとの協力で、イタリアのトリエステにある「国際理論物理学センター」を運営している。
国連食糧農業機関」(FAO)とも食糧と農業の分野における原子力の利用に関する研究を行い、「世界保健機関」(WHO)とは医療および生物学における放射線の利用について研究している。

今回はWWFと国連のどちらの見解も入れたので、いささか長くなってしまいました。

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※参考: 現行の「エネルギー基本計画」(経済産業省資源エネルギー庁) 

※トップ画像:BingAIで作成した「2050年の地球の様子(エネルギーが枯渇した場合) 」